【144,お題:寂しさ】
始まりは、人で言うとこの"寂しさ"だったんだと思う
自分は人とは違うから、人が持つ"カンジョウノキフク"と言うものは無いんだと思ってた
でも、何百年も1人で居るとやっぱりつまらない
子供を拐って一緒に遊んだ時期もあったな...なんて思い返す度に
ズンと心臓に大岩を乗せられたように気分が沈む
こんな状態は初めてだ
静かな森の奥の静かな夜に、1人じっとしていると
森がザワザワとして、それと同じように心臓のへんがザワザワとするのだ
急に暗い大穴に1人ぽっちで閉じ込められたような気がして
なんでも良いから、隣に灯火となるものを置いておきたくなる
「寂しい」
ふとそう声に出してみる
意外なことに、人が造り出したその言葉はストンと胸に落ち着いた
もう一度声に出した、寂しい
そうか自分は寂しいんだと、だんだんと理解した
もう一度声にだす
今度は身体に変化が起きた
「......?」
自分の両目から熱い水が溢れている、なんだこれと両腕で拭うが
次から次と、溢れてきて止まらない
混乱していたが、なんだかこれが正しい気がして
ポロポロと雫を流したまま、しばらくして拭うの諦めた
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「お兄ちゃん?どうしたの?」
手を繋いで一緒に歩く小さな少女に見上げられ、何でもないよとにっこり笑う
きょとんと首をかしげた後、「お兄ちゃんも食べる?」と手に持ってるクレープを差し出してきた
「お兄ちゃんはいいよ~、琴葉ちゃんが食べな」
優しくそれを押し返しながら、頭の隅で
この時間が永遠になれば良いのに、とふと思った
あの場所に戻ったら自分はまた1人だ
「あ!ねぇ、あれなに!」
「んん?なにかやってるのかな?行ってみる?」
「いくー!」
小さな手を握りながら、軽くスキップしている可愛らしい足取りを眺めて
今だけは忘れていたい、そう思った
12/19/2023, 2:03:51 PM