君と見上げる月…
濃い血と硝煙、薬品の臭い。
肉のこげた臭い。膿んだ臭い。
いつになったら、この戦争は終わるんだろう。
思っても、口に出してはいけない。
祖国に残してきた家族が酷い目にあってしまうから。
傷口が痛い。
白いモノが蠢いている。
包帯で塞がれた片目じゃない方の目が、
夜空に浮かぶ月を見つけた。
もう自分は、家族のもとにも、君のもとにも戻ることはできないだろう。
異国の地で見上げた月は、
あの日、君と見た月そのままで。
君と見上げた月も、異国の月も、同じで綺麗だな。
彼は何かを呟いたあと、静かに目を閉じた。
9/15/2025, 8:12:20 AM