風邪
久しぶりに会社を休んだ。熱も有るしひどい頭痛で、市販の鎮痛解熱剤と風邪薬で、なんとかごまかして眠っていた。
何度も目覚めてはまた寝たが、ちょうど深く眠っていた時だった。ふいにインターホンが鳴った。そう言えば、安アパートの階段を登ってくる音がしたのを、うつつで聞いたような気がする。「誰だよー具合悪いのに!」とモニターをみると、宅配便の制服を着ている人が映っていた。
再配達は気の毒だなと思った俺は、インターホンに応じた。「はい」短く答えると、
「あー良かった!」と喜んでいる。
「◯◯運輸です。冷凍便です」
「冷凍?」「はい、〇〇市からです」
あー母か!と思ったが、寒気がしていて外に出る勇気も元気も無い。
「すみません。風邪で出られないので、ドアの前に置いていってもらっていいですか?」
「あ、は〜い、畏まりました」
程なくして、今度は鉄の階段を降りていく音がした。
誰かに持ち去られても嫌なので、外出用のジャンパーを羽織ってドアを開けた。そこそこの大きさの段ボールが置いてあった。やっぱり母だ。箱を持ち上げたら、宅配の伝票になにかボールペンで書いてある。
「おだいじに!」
下手な字の走り書きだが、なんだか嬉しくて涙が出た。風邪で、心細くなっていたのかな。
12/17/2024, 3:55:11 AM