思い出

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私のお祖父さんは、とても器用な人だった。
畑仕事から、小さい小屋なら大工さんのようにテキパキと作り上げる。
夏になると、茄子に胡瓜にトマトといった、夏野菜を畑一面に実らせて、

「今年も良くできた。美味そうだろ?」

そう言って眩しくにっこりと笑っていた。

私が[新しいおもちゃが欲しい]と、駄々をこねれば困ったように、でも何故か嬉しそうに

「しょうがねぇなぁ。ほら、少し待ってろ。」

お祖父さんはそう言って、家の中に入っていく。私は首を傾げて待っていると、お祖父さんは手に絵の描かれた少し厚めの紙?と、石みたいな色合いの重たそうなコマを持ってきた。

見たこともない〔新しいおもちゃ〕に、私はとてもワクワクとしていた。

「ほら、これで遊んでみろ。」

そう言ってお祖父さんは派手な厚紙を地面に置いて、重たそうなコマに、たこ糸のような紐を巻き始めた。
あっという間に巻き終えて、お祖父さんはニヤリとしたあとにバッと巻き終えた紐を引く。

ガチリと、激しい音を立て地面で回るコマに、私は見入る。
ガチッバチッといった激しい音を鳴らしながら、コマは回る。私はじぃっと見つめる。見つめていくうちに、コマはゆるゆるとした回転になっていき、やがて止まった。

私がワッと〔マネしたい!どうやったの?〕と聞けば、
お祖父さんは嬉しそうに笑いながら

「簡単さ。ほら、こうやって紐を巻くんだ。」

優しい声色で、私の手に大きなお祖父さんの手を重ねて教えくれる。

あったかくて、しわしわで、ごつごつとした手のひら。

その感覚が、くすぐったくて、心がぽかぽかとする。

そんな幸せを、じっくりと噛み締める。

いつも笑っていて、面白いことや、楽しいことをたくさん教えてくれた。
そんなお祖父さんが、私は世界で一番誇らしく、大好きである。

8/16/2023, 12:49:37 PM