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いつまでも捨てられないもの


明日、この街を出ていく
引っ越しの最後の詰め込み
思い出を封じた箱
これを最後に選んだのは
これからに必要なものの
判別をするためだ

いつもなかなか捨てられない
そんな私の部屋はジャングル
ワンダーランドの終焉
メリーゴーランドを止める前に
まっさらにする最後のお祭り
なにもかもを残した部屋に
何が必要かを問いかけていく

私の部屋には写真はない
思い出の残し方は結局のところ
その時のノリで買った
いわゆる意味のないものばかり
次の朝になんでこれ買った?
本人に問いかけるレベルのもの
笑うに笑えないものまである

判別と言えば格好がつくが
ほとんどはガラクタばかりで
部屋のカオスが居心地が良かった
ゴミ屋敷の言い訳はよくわかった
寂しさの穴埋めには方法がたくさんある
何よりも物質的なものを望めば
自ずと答えはこうなるのは必然なのだ

次の道筋を決めないままに進む
何かを変えたいと思うよりも
このままではいけないという衝動
どう動くかより動かないという焦燥
見切り発車同然で渡り鳥のように
遠い旅へと出ていく気分だ

さぁ本当に大事なものはなんだ?
手当たり次第に手にとっては
違うとゴミ袋行きの快速列車は進む
気づけばなん袋もゴミと化した
思い出は捨てられる覚悟を決めている

変わり果てたワンダーランド
ここにあるのは最初の型
ただの何もないだ
ここに来た時の始まりの姿
偽っていないありのままの形だ

そこから見える風景
この窓を開けたのもここに来て以来だ
なんて良い眺めなんだ
そこに流れる風もやさしく
初めて内見した時の
ここに決めた理由を思い出す

この景色が素敵だからだ

ここでなら何かを変えることができる
そう信じて借りた部屋だった
ここに来た日ぶりに思い出せた
この感情は新たな思いを連れてきた

この景色は変えられない

辿り着いた答えの場所は
なんら変わらないここにあった
問題はただ私の気持ちひとつ
私が見たいと思って見てこなかった
ここからの景色の為に全てを捨てて
もう一度気づくことができた

ここから見えるファンタジーな世界
ここに来た本当の理由
私の再びは今ここからになる
結局、私は私を捨てられない
もう一度と誓ったこの場所と共に
嬉しい恥ずかしい心は動き出す

何もない部屋から見る世界は
あの時の感情を思い出させる
ずいぶん遠回りしてきたね
ただ振り出しに戻った人生ゲームに
進むべき方向だけはやさしかった

8/17/2023, 3:27:45 PM