見ないふりをした感情。
紛れもない彼女への恋情。
俺は着ているシャツをぐしゃりと握った。
この気持ちに気が付かなかったら良かったのに。このまま推し潰せればいいのに。
でも、そんなことは無理で。
どうしたって彼女を視界の中に入れてしまうし、ふと視線を送ってしまう。
異性と二人っきりで話していると、それが本当に楽しそうだと胸の中がモヤモヤして仕方がない。
でも。だからこそ、面を付けるんだ。
彼女への密かな恋情に、お面でフタをするんだ
それでも。
彼女と二人で話せる瞬間は、胸が温かくなるし、自然と口角が上がってしまう。
隠しきれない〝好き〟という気持ちが溢れてしまうから、やっぱり面を付けるんだ。
恋はしないと決めたのに、彼女の笑顔は簡単にその決め事を取っ払ってしまうから、俺も気持ちを抑えられなくなりそうだった。
おわり
二八〇、ひそかな想い
2/20/2025, 12:50:30 PM