いぶし銅

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ブランコ

死んだ友人に線香をあげた。とは言っても、墓はまだ無いため、家で小規模にあげることにした。小規模ながらも、遺影を準備したくなったが、まともな写真がなかった。唯一友人が真顔で映っていたのは高校の卒業アルバムだった。煙草とスマホだけ上着に入れて、肌寒い2月を歩くことにした。見慣れた住宅街と少し前まで通っていた高校、しがみつくように脳裏によぎる友人の顔に嫌気がさした。享年32歳。会社の相談をよく受けていた。殆ど毎週来ていた居酒屋。何気にこんな夕方に入るのは初めてだった。レモンサワーと生ビールを注文し、レモンサワーを対角の席に置いた。あいつは自室で首を吊って死んだらしい。お互い辛い人生だったな、返事が来ないと分かりつつ、あいつのLINEに送った。あいつが入った会社は、残業が多く、よく深夜に電話に出たのを覚えている。それからは記憶を消すために酒を流し込んだ。7、8、それ以上は数えるのを辞めた。店を出ると千鳥足で公園に向かった。途中の橋で死にたくなった。俺は死ねなかった。あいつが死んだ時は苦しかったと思う。俺は煙草を川へ投げ捨てた。さっきまで死のうとしてたやつが、今度は長生きのために煙草を捨てている状況に、あいつは笑ってくれた気がした。公園に着くと、雨で濡れたブランコに座った。ブランコを漕ぐほどの体力も残っていなかったため、ただ座っていた。俺はまた死にたくなった。死にたくなったけど、死ねなかった。死ななかった。

2/2/2026, 7:08:25 AM