ガタガタと音を立て、到底快適という言葉とは程遠い道路の上を走るバス。一番後ろの、長いシートで二人、肩を寄せ合っていた。
誰がこんなところから乗るのだろう、と言いたくなるような辺鄙な場所で僕らは降車し、去るバスの背を見送る。言葉少なに連れたって歩き、辿り着いたのは海に面した崖の上。まさに断崖絶壁と呼べるであろう崖だった。
バスに乗っている間から繋いだままだった彼の手が、少しだけ震えていることにようやく気がついた。僕も知らぬ間に力が入ってしまっていたのかもしれない。隣で海を見つめる彼の横顔が、夕日に照らされてきらきら輝いている。その様は希望、という言葉を想起させたが、今から僕たちが辿るその言葉に全くそぐわぬ結末を考えると思わず吐き出すような小さな笑いが零れた。
「……本当に、いいの」
彼が手に力を込めて、僕に問いかける。
「もちろん」
きっと君のことだから、やっぱり、とか、今ならまだ、とか考えているんだろうけど、僕の気持ちが変わることはない。
不安そうな顔で僕を見つめる彼に微笑んでみせると、ぎゅっと抱きしめられた。
「…………ありがとう、一緒に来てくれて」
「どういたしまして。こんな最後なら本望だよ」
最後に、僕らは出会った頃みたいな優しいキスをした。
沈む夕日と一緒に落ちていく僕らの体。
きっとまた、来世で。頬を切る風を感じながらそんなことを思った。
4/8/2026, 6:14:23 AM