tifon

Open App



繰り返し夢にみる場所がある
壁のように急な坂の底にある建物で
中に入り見上げると
天井がぼやけるくらい高い

その高い天井に向かって立つたくさんの書棚
書店なのか図書館なのかはわからない
書籍に満ちた静かな空間

書架の間の細い通路をゆっくり移動する
なかなか目あての本は見つからないが
焦る気持ちもなく ただ
背表紙を次々と目で辿っていく

そのうち何故か夕闇が迫る気配がして
帰らねばと思うのだ

坂道と書棚と夕闇
ああ またここに来たなと思う
不安も焦燥もない 静かで穏やかな場所

いつか日が暮れるより前に
探していた一冊を見つけ
坂と塔のある街での暮らしが始まるだろうか




「夢が醒める前に」

#51

3/20/2023, 11:04:52 AM