【太陽の下へ】
眩しくて眩しくて、目を開けていられなかった。
地下とは比べものにならない明るさが怖くも感じた。
あんなに外に出ることを望んでいたのに、いざ出てみたら恐怖心の方が大きいだなんて思わなかった。
外では煩いほどに蝉が鳴いていた。少しずつ目を開けて、ゆっくりと周りを見渡す。そこには、およそ十年ほど地下に居たせいだろう、若い頃に見たのとは違う景色が広がっていた。昔は木々が生い茂っていたが、今は真新しい家ばかりが立ち並んでいる。けれど、真っ青な空だけは変わりなかった。
「先生」
数年ぶりに聞いた声に振り返る。昔の教え子だった。
「ご無沙汰しております。ようやく研究していた薬が完成したそうですね。おめでとうございます」
「ああ。十年ぶりに地上に出てこれたよ」
「長かったですね。きっと先生のお陰で、沢山の人が救われるでしょう」
夏の太陽の下。強い日差しに頭がくらりとする。暑さのせいか、体も妙に重い。あまりに久しぶりに外に出たため、少々疲れたのかも知れない。やはり十年も地下に篭って研究するなんて、無茶だったということか。
けれどこの太陽の日差しのように、人々の未来が明るく照らされるのならば安いものだ。
11/25/2023, 11:05:42 AM