頼る気なんて、毛頭なかった。
隣に並ぶつもりも、さらさらなかった。
ただ一つ、修羅場を切り抜けたあの時の。
背中を預けた安心感と、ドンピシャでハマる阿吽の呼吸が、とても心地良かったから。
あいつの優しさにずっと甘え続けてしまったのだ。
「僕たち無敵の相棒だよな!」
「へーへー。そうかよ」
折角の賛辞にもそっぽを向き、ろくに笑いもしやしない。
俺みたいな無愛想な男相手によく言ったものだ。
本当はずっと、あいつのことを認めていたくせに。
見栄だとか、プライドだとか。変なこだわりばかりに縛られて。
嗚呼、何てつまらない。
俺は、とんだ大馬鹿者だったのだ。
だからきっと、これは天罰だ。
一言くらい。
一度きりでも、素直に気持ちを返せていれば、こんな結末にならずに済んだのだろうか。
動かなくなった相棒を目の前にして、漸く感情が動き始める。
「何で、俺なんか庇ったりしたんだよ。お人好しが過ぎるだろ」
独りきりになって初めて、止め処ない後悔が募りゆく。
「俺もお前も、馬鹿だなあ」
今更の言葉を皮切りに、溢れた涙が止まらなかった。
(2025/09/11 title:085 ひとりきり)
(2025/09/12 ※ 改稿して再投稿)
9/12/2025, 9:59:26 AM