何度も読み直しているボロボロの冒険日誌。
数年前、村にやってきた冒険者から貰った物だ。
冒険者は心臓病に侵されていて、僕の家で看病していたが、亡くなった。
幼い頃から心臓が弱かったらしい。
「どうしてそんな身体で冒険を?」
今思えば、なんて質問をしてしまったのだろうと申し訳ない気持ちになる。
だが、冒険者は嫌な顔をせず答えてくれた。
「こんな身体だからこそ、世界を見て回りたかったんだ。色んな人に会って、見たことがない物を見て、生を実感したかったんだろうね。まぁ、自己満足に過ぎないけど。本当はまだ冒険をしたかったけど、どうやらここまでのようだ」
どこか寂しそうに話す冒険者の姿を、今でも忘れられない。
「よければこの日誌、貰ってくれないか?今まで冒険したことを書いた日誌なんだ。興味があれば読んでみてくれ」
こうして、僕は冒険者から冒険日誌を受け継ぐ。
冒険者は世界各地で体験したことを、冒険日誌として書き記していた。
生きた証……いや、軌跡というべきだろうか。
冒険日誌を読んでいくうちに、僕は世界に興味が沸く。
冒険者が見てきた世界を、僕も見てみたい。
そして、冒険日誌の続きを、冒険者の代わりに書き記したい。
気がつけば、僕は冒険の旅に出ていた。
冒険者の軌跡を辿り、世界各地を巡る。
世界はあまりにも広くて、初めて見る物が多い。
色んな人と出会い、その地の文化や歴史を学ぶ。
冒険って、こんなに楽しくて、わくわくするものだったんだと実感する。
そして、遂に自分の手で冒険日誌の続きを書き記す時が来た。
「よし、行くぞ」
僕はわくわくの気持ちを高めながら、未開の地へ足を踏み入れた。
5/1/2025, 12:01:09 AM