一ノ瀬

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 駄菓子のスティックゼリーが苦手だ。問題ないと分かっていても、食べ物が纏うには嫌に不健康すぎる色合いが恐ろしい。
 でも、先輩は駄菓子屋で必ずそれを買う。今日は箱ごと買った。50本くらいあるだろう。そんなに食べたら体に色が移ってしまいそうだ。
「好きなんだよね、色がきれいで」
「味じゃないんですか」
「もちろん味も嫌いじゃないけど」
 そう言いながら先輩は、無造作に何本かゼリーを取り出して空に掲げた。陽の光を浴びて、半透明のそれらはきらきらと輝く。
「こうやって並べると、なんだか虹みたいだから」
 先輩は笑う。そしてオレンジ味のゼリーを束から引き抜いた。先輩の手の中の虹はあっけなく橙色を失ったことになる。6色の虹がどこか欠けていると感じるのは、僕達が虹の色を7色分知っているからだ。
「国によって虹の色は違うらしいですよ」
「一番上が黄色だったりするの?」
 見たことのない虹を思い浮かべながら、僕は先輩に、色の見分け方の違いを説明する。「藍色を見分ける僕達の方が、世界から見れば変なんでしょうね」と僕が言うと、先輩は気の抜けたよくわからない返事をした。
「でも、黄色から始まる虹、見てみたくない?」
 色の見分け方より、先輩の興味はそっちにあるようだった。
 先輩の手元を見る。1色を失ったそれは、まだかろうじて虹に見えるけど、きっと先頭が黄色になってしまえばもはや虹ではないだろう。天変地異もかくやだ。誰もそんな虹は見たくない。
 だけど、先輩だけはそれを見て喜ぶのだろう。僕は奇怪な虹よりもそっちの方がよほど見てみたい。
 先輩の虹を黄色から始めるべく、僕は虹の中からいちご味をもらう。

1/8/2026, 1:58:05 PM