終わらない夏
じりじりと蝉が鳴く夕方。まだ日は高く、熱風が窓から注がれる。いつの間に暑い国になったのだ、日本は。スリランカの留学生が、母国には季節がないと言っていた。このまま冬が来なかったら、日本もスリランカのように常夏になってしまうのか。そんなはずはない、はず。
凹んだ腹と重い腰を携え、ようやくその日初めての太陽と謁見しつつ近所の焼肉屋に向かった。暑い。暑くてたまらない。深く考えず、言われるがまま食べ放題と飲み放題を注文。とりあえずビールだろう。キンキンに冷えた、いかにも美味そうな生中を喰らうと苦味だけが嫌に残った。今日は何か意義のあることをしただろうか。肉が来るまでぼうっとしていたら窓ガラス越しに雨粒を見た。降られる前に来られてよかった。
じりじりと肉の焼ける音を聞きながら、今か今かと馳走にありつけるのを待つ。店の外から爆音が数回響き、落雷でも落ちたかと思えば、近所の小学校で毎年恒例の花火が打ち上げられていたようだ。小雨の中でも花火をあげるのだな。気概を感じる花火師に心の中で賞賛を贈っていると、網の上でカルビがすっかり炭になっていることに気づいた。
こんな日常を繰り返していると、いつまでも歳を取らず、何も変わらず過ごせてしまうのではと錯覚してしまう。しかし無情にも歳は取るし夏休みも終わる。なんなら冬だって来るだろう。終わらない夏なんて来るわけがない、少なくとも日本には。ああ、そうだな。いつかスリランカに行ってみたいものだ。こんな日常すら愛せたその時は是非、行ってみたいものだ。
8/18/2025, 8:15:08 AM