《ひなまつり》
「おひなさま、きれいだね」
「本当だね、綺麗だね」
「きょーちゃんの髪もお雛様みたいで綺麗だよ」
「ありがとう」
あなたのその言葉が本当に嬉しくて。
幼い頃の私はお姫様じゃなくて、お雛様になりたがった。
お洋服よりもお着物を着たがった。
そして、あなたに褒めて貰ったらふわふわした気持ちでいっぱいになった。
「お雛様みたい?」
そう回って聞く幼い私にいつもあなたは「綺麗だよ」と答えてくれた。
恋にもならなかった幼い頃抱いた淡い憧れ。
その思い出は今も私の胸の中に大切にしまってある。
私知ってるの。
反抗期で何にでも怒って何でも壊すあなたが雛人形にだけは手を出さなかったことを。
玄関に置いてあるし、小さいから壊しやすいはずなのに。
壊すどころか、横の壁を蹴った衝動で位置がズレてしまったのをなおすくらいだった。
だからね、今雛人形を乱雑に扱う貴方は偽物。
でもね、私の前ではあなたでいてくれるから、居てくれる限り見ない振りしてあげる。
3/4/2026, 6:05:13 AM