鴫沢(しぎさわ)

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 私は時折、犯罪者に同情することがある。もちろんほとんどの犯罪には被害者がいて、被害者の受けた傷のことを考えると犯罪者に同情するなどは不埒千万であるが、時折同情が頭をもたげる。
 当然すべての犯罪者に同情する訳ではない。大抵は同情に値しない者の方が多い。しかし中には、世界がもう少し彼にやさしさを見せていれば、彼は犯罪者にならずに済んだのではないかと思える類いの犯罪者がいる。
 私はその者に深く同情する。また、彼のしたことは、私のしたことであったかもしれないという同一化じみた想念も浮かんでくる。
 この想念はいかにも恐ろしいものだが、私自身多くの犯罪者と共通して、孤独で他人との関わりが極度に少ない境遇であるがゆえに、犯罪の外的因子は私にも揃っているのではないかと思えてくる。
 だが、私に罪を犯すおそれはないので安心していただきたい。私はもはや人恋しい、さびしがりやの思春期の子どもではなく、犯罪者と自分とを重ね合わせる感傷癖を自嘲的に笑い飛ばせる大人になろうとしている。しかし、犯罪者に同情するというのは今後変わらぬ私の習慣になるだろう。

2/21/2024, 8:18:29 AM