コルン

Open App

「風が運ぶもの」


3月にもなったというのに、吹き付ける風はまだまだ冷たい。未来の後輩たちの合格発表や先輩方の卒業式など、桜が似合うようなイベントは既に終えてしまったというのに、季節は交代を拒むかのように素知らぬ顔である。外へ出かけるにはコートが必須だし、通り過ぎる人はマフラーや手袋に身を包んでいる。冬が特段嫌いなわけではないが、そろそろ春に表舞台の出番を譲っても良いのではないか。
3月に対する理想と現実のギャップに思いを馳せつつ、通り過ぎる冷たい風に身を縮める。冬将軍、なんて季節外れの言葉がぴったりなほど、今日は風が強い。さすがはかの有名な皇帝を打ち破ったほどの将軍、一筋縄では退いてはくれない。そんな彼に太刀打ちできるほど私は強くないので、今日も大人しく通り過ぎるのを待つのみである。
未だ硬く閉ざしたままの桜の蕾は、入学式には間に合うだろうか。今よりも幾分柔らかくなった風が、桜の花びらを巻き上げながら春を告げるところを想像して、ふと口が緩む。無情にも冬の停滞を主張し続けるこの風が、いつか春の来訪を知らせてくれるのを今日も待っている。
北風が春風に変わるまで、あと何日かかるだろうか。

「春はまだ遠そうだなぁ」

3/7/2025, 2:46:20 AM