入院中の夫がクローバーをくれた。
「これ、どうしたの?」
「作ったんだ」
こいつで、と掲げられたのは一冊の『折り紙の本』。談話室に設置された本棚で見つけたらしい。スマホで動画を観尽くし、無料漫画も読み尽くし、SNSのチェックにも飽きたようだ。ふーん、いいんじゃない? ずっとスマホを弄るのは目に悪いからね。
「でも、なんでクローバー?」
「『数分でも見舞いに来てくれる妻に幸あれ』ってね」
その日から夫は毎回折り紙を折って、私に作品をくれる。
ハート。蓮の花。薔薇。チューリップ。紫陽花。朝顔。カラー。水仙。ひまわり。ダリア。椿。たんぽぽ。カーネーション。
私の名前に入ってる桃の花が沢山。私が好きな百合は、もっといっぱい。
花柄の箱まで用意してくれた。勿論、イラスト込みでの手作りだ。それに入れて、貰った花は大切にとっておいている。ひとつも欠かさずに。
最後の作品はポインセチア。メリークリスマスの言葉と一緒に差し出され、私は泣いた。彼の退院と同じぐらい最高のクリスマスプレゼントだった。
さあ、今度は私の番。
ひと折りひと折りに感謝の気持ちを込めて。
恐竜好きな彼のために、まずはティラノサウルスを折ってあげよう。
2/10/2024, 5:41:18 AM