月猫娘々

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 持つ者と、持たざる者。
 選ばれた者と、選ばれなかった者。
 神たる獣たちの選択だ。
 〝運命〟という言葉で片付けるのは、諦めるのが楽だからだと悟ったのはいつの頃だったか。一方的に決定だけを突き付けて来る、こちらの意思も努力も及ばぬ存在。
 それでも、この巡り合わせに感謝していた。生まればかりの弟が己れの指を握ってくれたその日から。弟を守り支える為に生きていく。持たざる者として生まれた事で周囲の期待を裏切り、伽藍堂だったこの身に喜びが満ちた。使命とともに。
 ところがある日、『神様が舞い降りて来て、そう言った』。

────汝が弟を喰い殺せ。

7/28/2023, 5:49:55 AM