黙っていて
後にも先にもこれ以外に私を縛るものはない。唯一の行動指針で遵守すべきルール、ただそれだけ。
私の言葉はみんなを不幸にするらしい。他の人と同じように何が好きで何が嫌いで、楽しいとか悲しいとかを伝えるだけで睨まれて疎ましがられる。
犯罪につながるような発言なんてないし、不快にさせるようなワードもない。まるで聞かれたことに返事をすること自体が間違いだと責められているような沈黙のあと、私の言葉はなかったことにされて時間が動き出すのだ。
本を読んだ。話し方や口調、なんらかの話題にでもできたらと期待した。失敗した。
ノートに思ったことや飲み込んだ言葉を書き出した。読み返してみて不快になるような言葉選びがないか確認した。何も分からなかった。
ネットや専門書で勉強した。聴くことだけは上手くなって話すことはからっきし。これも失敗した。
ある時、酷い風邪をひいてしばらく声が出なくなった。
不便かと思ったら、全くそんなことはなくてむしろ快適だった。身ぶり手ぶりだけの簡単なやりとりで終わることに感動さえした。
言葉を選ばずとも発さずとも伝わるならいっか。
あれから毎夜、星が浮かぶ空に祈り続けている。
この声がなくなりますように、声帯を壊してほしい、と。
周りを不幸にし、不快にさせ、誰にも届かない私の言葉をどうか永遠に消し去ってください。
「あなたは何も言わないから、」
違うよ、そう望んだのはそっちでしょ。
…まあ言わないけど。
【題:星空の下で】
4/5/2026, 5:30:50 PM