うに

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最近隆二とぎくしゃくしている。
理由はわかっている。
世奈だ。
五年の時までは俺のそばにいることが多かったが、六年になってから俺より隆二と一緒にいることが増えた。
二人が仲良くなったのは、隆二の通っている英会話教室に世奈が通い始めたのがきっかけらしい。
風邪などで隆二が教室を休むと、世奈がプリントを持ってきたり、課題を伝えたりするのに家を訪ねて来るようになったというのだ。
世奈は、顔はまあ普通だが、胸がとにかくデカい。そして隆二は巨乳好きだ。とてもわかり易い。

俺と隆二は幼稚園からの付き合いだ。
小学校に入ってからは生憎五年まで同じクラスになることがなく、一方世奈と俺は二年からずっと同じクラスだった。
世奈のことははじめは嫌いではなかったが、四年の二学期頃から「世奈が理のことを好きらしい」と噂になり始め、なんだか面倒になって避けるようになってしまった。世奈は懲りずに、俺の周りをうろついていたが。
五年生になり、隆二と同じクラスになって、俺は隆二とまたつるむようになった。世奈は相変わらず俺の近くをうろちょろしていた。そんな世奈の前で、隆二は挙動不審になり、俺はなんとなくこいつの気持ちに気づいた。
隆二は世奈が好きで、世奈は俺が好き。
でも、表面上はなにもないように振る舞っていた。俺は隆二と遊べればそれでよかった。
それなのに。
世奈と隆二が仲良くなると、二人は俺を外して話すようになった。はっきり言って面白くなかった。

そんなある日、珍しく隆二が俺を呼び出した。
以前はよくあったことだ。
「理、ちょっと話したいことがあるんだけど」
「なに」
「……昨日、俺、英会話休んでさ、世奈が家に来たわけ」
いつものことだ。
「でさ、……俺、世奈のこと……押し倒した」
「はぁ!?」
予想外の展開に思わず声が出た。
「家に俺だけでさ、世奈のやつ、超薄着でさ、気がついたら、その」
「いやいやいやいや!」
何してんだよ。思わず突っ込む。
隆二はそのまま黙ってしまった。顔が赤い。
「で、どうしたわけ?」
仕方がないので先を促してやる。
「や、普通に、そーいうのやめよ、って言われて、プリントだけ渡されて、帰られた」
どうやら何事もなかったらしい。世奈のほうが一枚も二枚も上手だったということか。ほっとした。
「何もなかったならいいじゃん」
「で、俺、気づいたんだ。世奈のことが好きだって」
遅っ! 他人の俺が一年以上前に気づいたことをやっと自覚したというのか、こいつは。
「でも、理も世奈のこと好きだろ? 俺、恋と友情と、どっちを取ったらいいのかすごく考えて」
盛大な勘違いが発生している。俺が世奈を好きなんじゃない、世奈が俺を好きなだけだ。
「俺、こんなことで理との友情を失いたくないんだ。だから! 正々堂々と、選ばれた者勝ちってことでいかないか?」
隆二はなんだか、陶酔している。
俺は深く息を吐いた。
「ああ、わかったよ」
「ありがとう! 理ならわかってくれると思った!」
隆二は抱きついてきた。大げさなやつだ。
「話は終わりか? なら教室戻ろうぜ」
軽くあしらうと、隆二は体を離してニカッと笑った。
「やっぱ、俺たちの友情は永遠だな!」
そうして、教室へと歩き出す。

……友情、か。
まあいい、そういうことにしておこう。

俺は誰にも聞こえないくらいの溜息をついてから、隆二を追いかけて歩き出した。


(お題:友情)

7/24/2024, 5:12:52 PM