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♯君と僕


 僕たちは同じ日に生まれた。
 君が弟で僕が兄だったけど、僕は君で君は僕だった。
 僕たち同じ顔で、同じ声で、同じ服を着て、同じものを好きになって、同じことをしたがって――ふたりでひとりみたいだった。
 ……なのに、いつからだろう、君は僕と同じものを見てくれなくなった。
 僕が赤が好きだといったら、君は青が好きだといった。
 僕が遊園地に行きたいといったら、君は水族館に行きたいといった。
 僕がスポーツで褒められたら、君は勉強で褒められようとした。
 明日、君は家を出て高校の寮に入る。まるで僕から離れたがっているみたいに。

 ……ああ、そうだったんだ。
 このときになって、僕はやっと理解した。
 
 一緒に生まれたけど、一緒には生きていけない。
 僕たちは「ふたり」なんかじゃなくて、「ひとりとひとり」でしかなかったんだ。

4/11/2025, 1:40:20 PM