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 君の部屋に加わった新しい置物は、華美な着物を纏ったデフォルメされた男女が1対になって座っていた。
 異国で見たことがあったような…。見る者を感心させる細部まで作り込まれた着物や頭の装飾品は、やはり手先の器用なあの国の職人によるもの。

「ひな人形って言うんだって。『ひなまつり』に欠かせない飾りらしいよ」
「お祭り?何を目的にしてるって?」
「女の子の成長。文化について教えてもらってたら、話を聞いてた近くのおばあさんがお菓子とかお花を持たせてくれてね…」
 「なるべく早めにって」苦笑しながら持ってきた紙袋から次々でてくる。
 白い飲料、大きさはポップコーンに似たパステルカラーのお菓子、ひし形に整えられた三色のお餅と葉にくるまれ桃色に着色された
「これは知ってる、桜餅だ。」
 カバンの口からずっと顔を見せていた桃の花もそうらしい。ひな人形はお下がりらしい。

「桃の節句とも言うんだって。」
「まさに桃色だね」
 食卓の上は桃色好きにはたまらない状況だろう。白い飲料が差し色になって、これは甘酒だと教えてくれた。口にしたことはない、カクテルとも違うジュースのような味だ。

「男の子の成長を祝う行事もあるらしいよ」
「その時は何を?」
「えっとね…鎧と龍みたいに大きい鯉?」
「鎧…?」

 鎧は戦うために身につける物のはず…。大きな鯉との戦いの準備かな。どう参加したものかと考える俺を見て君は慌てて説明が悪かったと謝った。
「た、戦わないからね…!平和なお祭りだから…!」
「なんだ残念。」大きな鯉、機会があれば戦って見たかった。

 桃の花を手折って君にかざす。
「お姫さまを守るための訓練かと思ったよ」
 先のとがった花弁は、桜とも梅の花とも違った。愛らしい色を持ちながらシャープさを兼ね備えた姿はどことなく君に…
 いや、似合ってるけどこれじゃないな。

3/4/2023, 9:36:18 AM