冬華(トウカ)

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この場所で
『10年後!また、この場所で会おう!』

そう言った君は、10年後になった時も、20年経った今も、この場所にはいない。

君は、どこに行ってしまったの?
あの時の約束は、どうなったの?

君がいない春がやってくる。きっと、来年も、再来年も、10年後も。この場所には、一人の春が訪れる。

俺は、何をしているのだろう。そりゃ、10年前の約束なんて、覚えてないだろうし、もっとたってしまった今、君がくるはずもない。

「何、やってんのかな。俺…」

目の前に咲く満開の桜。なんでも、樹齢500年を超えるらしい。

立派に咲く恋色の花を見上げる。さぁ…と、風が吹き抜けて、花弁を運んでいく。

君の元へ届くかな…なんて、考えながら、ぼーっと、眺める。

隣に誰かがやってきた。

「綺麗ですよねぇ、この桜」

話しかけてきた人は、懐かしそうな目で桜を見ている。

「えぇ、本当に。ここで、20年も前の約束のために、毎年やってきてるんですよ。馬鹿ですよね、俺も」

いつまで経ってもやってこない君を思いながら、そんなことを呟く。

「えぇ、本当に。馬鹿ね、あなたも。約束を守るところなんて、変わらないんだから」

泣きそうな声で、馬鹿だと言われたが、彼女の発した言葉に反応して、勢いよく隣にある顔を見る。

そこには、20年前とは大人びて、変わってしまった顔が、20年前と変わらない子供っぽい笑顔を浮かべて、笑いかけていた。

2/11/2024, 12:08:44 PM