端から見たらほんの些細なことでも、人生も世界も乙女心も動くもので。
あの日、あの日の私の宝物を直してもらった程度のことで、初恋は転がっていってしまった。
宝物は、違う意味でもっと大切になった日から数年後。
「真依ちゃん!」
あれから転がっていった心はもう見えなくなって、尊敬の念しか持っていない。
いないのだから、名前を呼ばれるだけで心臓が跳ねて喜ぶのは、敬愛の気持ちだけ。
「久しぶりだねえ」
笑顔を見ただけで頭が白くなるのは、だだの名残で、パブロフの犬みたいなものに決まってる。
それだけったら、だけだってば。
【些細なことでも】
9/4/2024, 8:00:56 AM