『 常夜灯 』
目の覚めた時には黒い景色があった。
寝起きで朦朧とした頭にカビと酒の混ざった強烈な臭いと頭をグワングワンと揺らすような感覚が襲ってて、私は飛び起きた。
ダンボールが私の上に被さっていたのか黒の視界が一気に拓ける。
カビ臭さの原因はこれのせいだ。
眩しい日の光が私の体を照らし鈍った感覚と昨日の記憶を戻す。
酔った時の記憶が残るというのは色々な意味で困る。自分のやらかしを覚えているからだ。逆に何が起きたかわかってさえいれば対処出来ることもあるのだが...。
そう考えている間にスーツの汚れを手で軽く払い、崩れた身なりを軽く戻した。
辺りを見渡すとダンボールハウスがチラホラと....。
嫌な予感を感じた。私はすぐさま貴重品の所在を確認する。
スマホに財布...あったのはこれだけ。
寝ている間に漁られたのか財布の中身のお金と腕時計が無くなっていた。
さて、どうしたものか。
二日酔いの状態で考えてもまともな答えはでない。
...ひとまず帰ろう。
道中、昨日の記憶を辿る。
私はその日、違法労働スレスレの会社を辞めた。
疲れきっていた灰色の身体は色を欲しており、沢山の色が惑わす場所へと導かれるのは必然であった。
最初は青。次は赤、その次は黄色又次は桃に緑に紫...。
眩しすぎるくらいの色達に遊ばれる。
その時はとても楽しかった。
様々な色が体に混ざり気づいた時にはぐちゃぐちゃに混ざった何かになっていた。
一時的に得た色は一時的に過ぎない。
終わればまたもどる
得たものより、失ったものの方が多かったことを実感した。
そしてやっとのこと、帰りついた頃には外は暗く、昨日までの色は全て抜け落ちていた。
疲れた体そのままにベットに眠る。
一点だけ淡く光るオレンジ色が白い体を今日も優しく染めるのであった。
7/27/2023, 11:02:53 PM