森瀬 まお

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ぼんやりと月を眺めた。
月の丘のまわりには、たくさんのススキが揺れていた。
月はいつでも凛としていて実に美しい。
特に、私のすむ月の丘でみる秋の月は、この世のものとは思えないような雰囲気があった。
私はこの場所が大好きだった。
だから、私はここを最期の景色に選んだのだ。

遡ること約一年前・・・・・・
私は余命一年だと宣告された。
最初は全然実感がわかなかった。
でも日が経つにつれて少しずつ
「あぁ、死ぬんだ・・・・・・、私。」
と思うことが増えた。

そして今日、私の命のタイムリミットが終わりを告げようとしていた。
別に根拠があるわけじゃない。
ただ、何かが終わる。
そんな感触が私の心をつかんでいた。
お母さんが死んだときもこれに近いものを微かに感じた。
虫の知らせというやつだろうか。

さーっとひんやりとした風が私をすり抜けた気がした。
私の存在がどんどんぼんやりとしたものになっていく。
月の丘のまわりには、たくさんのススキが揺れていた。
あぁ、子供の頃はあのススキをいっぱい抱えて、家に帰ってよくお母さんに叱られたなぁ。
ふと、そんな記憶がよみがえってきた。
ふふふっ、懐かしいなぁ。
そんな思い出をいっぱい抱えて、私はお母さんの所へ走っていった。

   









#ススキ

11/11/2022, 8:55:11 AM