どんなときも毅然と背筋を伸ばす人。
そんな印象だった。
黒い礼服はピンと張っている。
結った長い黒髪に光が反射する。
整然とした進行、堂々としたスピーチ。
冷酷、という揶揄も聞こえる。
冷たいかはともかく、不思議だった。
連れ添った人を看取った後とは思えない。
いっそ直接聞いてみた。
彼女は困惑したが、ポツポツと話してくれる。
彼のために泣いてくれる人は大勢います。
皆さんが存分に泣ける場を作るのが役目ですから。
彼女に、あなたはいつ泣くのですか、と聞いた。
彼女は、もう散々泣きました、と微笑んだ。
そんなに強い人間ではないです、と続ける。
ただ今は、涙が空っぽなだけです。
題:涙の理由
10/10/2024, 12:25:53 PM