第二章:万剣連鎖の決戦
虚夜宮最強の破面が、ゆっくりと腕を広げた。
「解放(レスレクシオン)——“エスパーダ・デ・オスクリダ”(黒き剣帝)」
その瞬間、破面の体が漆黒の鎧に包まれる。
背後に浮かぶは巨大な剣の残影。
周囲の空気が震え、霊圧が激しく波打つ。
「ハッ……これが俺の真の姿よ」
悠也は、静かに千剣影を構えた。
「やっと本気を見せたか」
破面は一瞬で姿を消し、悠也の背後に現れた。
「遅い!」
振り下ろされる巨大な刃。
それを悠也は寸分の狂いもなくかわす。
「——いや、速いな。だが、読める」
悠也の足元から無数の剣が影のように出現する。
「卍解——“万剣連鎖(ばんけんれんさ)”!」
瞬間、千の剣が閃光となり、空間を埋め尽くす。
まるで雨のように、無数の剣が降り注ぐ。
「クッ……!」
破面は腕を交差させ、防御の構えを取る。
しかし——
ズバッ!!
一本の剣が虚の鎧を貫いた。
「なに……!?」
「“万剣連鎖”はただの剣の雨じゃない……お前の攻撃が俺に届くたび、俺の剣は増殖する」
悠也の背後に無数の剣が漂い、次々と破面へ向かって放たれる。
「つまり、お前が戦えば戦うほど——俺の剣がお前を追い詰めるんだよ!」
破面は苦々しく笑った。
「面白い……だが、俺の力を甘く見るな!」
刹那、破面の周囲に巨大な剣が十数本、空中に浮かび上がる。
「“黒き剣帝”の力——“無限剣舞”!!」
黒い剣が舞うように飛び交い、悠也の剣とぶつかり合う。
刹那の応酬。無数の剣と剣が、閃光を生みながら交差する戦場。
——その時、悠也は静かに目を閉じた。
「……終わらせるか」
千剣影が一斉に集まり、悠也の手元に一本の剣を生み出す。
それは、すべての剣を統べる一本の刃。
「最終奥義——“識滅ノ剣(しきめつのつるぎ)”」
悠也は剣を構え、一歩踏み出す。
「……ここまでだ」
一閃。
次の瞬間、破面の鎧に一筋の亀裂が走った。
「な……!?」
——“識滅ノ剣”は、相手の霊圧の”本質”を断つ刃。
破面の力は急速に失われ、その体が崩れ始める。
「クソッ……!こんな……馬鹿な……!」
その声が虚空へと消えた時、悠也は静かに剣を納めた。
戦場に静寂が訪れる。
悠也は一息つき、夜空を見上げた。
「……やれやれ、大技は疲れるな」
剣を背負い、悠也はゆっくりと歩き出す。
その背中に、戦場の風が吹き抜けた——。
「千剣影の継承者」完——
3/2/2025, 1:50:04 PM