紅蜘蛛

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1__奇跡をもう一度

1度目の奇跡はなんだったでしょうか、生きる歓び、生命の誕生、いえ、その逆です。

あれは銀華の降る夜のことでした。

純白に靴を押し当て、23cm程のシミがつきました。

シャリシャリ、ギュッギュッ。

前も見ずに何度も何度も。

繰り返し繰り返し。

無我夢中になりながら。

気づきもしなかったのでしょう。

パパーッ、ドンッ。

何が起こったのでしょうか。

赤い花弁が宙を舞いました。

ああ、綺麗だ。

今すぐその赤い花畑に足を踏み入れたい。今どんな顔をしていますか?。どんな音が鳴り響いていますか?。匂いは?。触り心地は?。

動けない私には確かめようはないけれど。

私は初めて人間という生き物の心情を理解出来たような気がしました。

私とこの感情を巡り合わせたことが1度目の奇跡でした。

あれから数年。

私は今も変わらず道に佇み、夜になれば人々を照らしています。

あの奇跡の感情をもう一度__

10/2/2023, 11:57:26 AM