27(ツナ)

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「ささやき」

季節は春。草木は芽吹き、暖かな日差しに包まれ、新たな生活に浮き足立つ人々の活気。
…とは裏腹に、ただ3年に進級しただけで何の変哲もない僕の日常。

放課後の静かな教室で惰眠を貪る、という今の時期にしかできない至高の娯楽を楽しんでいる。

微睡の中、教室に入ってくる足音が聞こえた。
「まだ、教室に残ってる輩が…しかも、昼寝なんかして。」
一瞬ビクッとなったが寝たふりでやり過ごすことにした。が、どんどん僕の方に近づいてくる。
僕の娯楽を邪魔しにきた奴は、あろうことか、僕の顔を覗き込んできた。
僕の寝顔をじっと眺めたかと思うと、
「きれいな寝顔だな…。って、俺なにを!」
そう、僕の耳元でささやいて教室を後にした。
一体、なんだったんだ…そして、誰だったんだ?どこかで聞いたことのある声だったが。

数日後、休み時間に放送が入った。
「ゴホン、えー、生徒会長より、役員の方々!昼休みに10分ほど緊急のミーティングがあるので、終わり次第生徒会室にお願いします!」

僕はピンときた、コレだ、この声だ。クラスメイトで生徒会長のあいつの声だ。
放送室から戻ってきたあいつと不意に目が合ってしまい僕は思わず口角が上がった。
すると、会長がブワワッと赤面した。
ビンゴ!
これから1年、楽しくなりそうだ。

4/21/2025, 1:45:36 PM