遠く遠く離れてしまったアナタへ。私が出来る唯一の贈り物。
大切なアナタへと届くように、月の綺麗な夜に唄う――――――。
それはほんの少しの邂逅。アナタは私の唄声に誘われたと言っていた。
私の唄う声がとても綺麗だと言って、時間が許す限りそばでそっと聴いていた。
もうずっと前の出来事なのに、未だ鮮明な記憶⋯⋯私にとってアナタはそれ程大切な人だったと今更ながらに思い知る。
アナタと会うのはいつも月の綺麗な夜だった。
月光の照らす湖は何よりも綺麗で―――その風景を見ていると私は、自然に唄を口ずさんでしまう。そこから興が乗り何曲も唄うのがいつものパターン。
誰も居ない夜の森にある湖。その湖面に映る月と、反射して煌めく月光が好きで⋯⋯月の綺麗な夜にはここに来るのが日課となっていた。
そんな中、突如として現れたアナタ。
私の唄声に誘われて、蝶のようにヒラヒラと⋯⋯それでいて自由に飛び回って、いつしか遠くへ行ってしまった。
私はここから動く事も出来ずに、ただ―――今日のような美しい夜に、アナタを思い唄うだけ。
どんなに離れていても、姿形が変わってしまっても分かるように、唄い続けるから⋯⋯こちらに戻ってきた時にはもう一度、アイにきて下さいね。
4/26/2025, 1:52:43 PM