komaikaya

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 世界のすべては『光と影』の中にある。目に見えるすべての物は光に照らし出され影を持つから、世界を絵にしたかったらその光と影を、注意深く見極めないといけない。

 例えば、僕が一枚の絵にして切り取ってみせたい世界では、どこに誰に光が当たっているのか、それを魅せるために影をどう描くべきなのか──手元に描くための手段があるときもないときも、僕はいつもそれを、頭の中でずっと考え続けているんだ。

 絵にしたい、と思えるその瞬間はふいに、僕が思ってもみないときに訪れる。僕の目、そして胸の奥がそれを脳裏に焼き付けるようとして、カシャリ、と音を立ててシャッターを切る瞬間がある。

 世界がその一瞬、いちばんに照らし出し、浮かび上がらせ、際立たせたいと願ったもの──僕はその美しいもの、光と影が世界から切り取ったそれを、どうにかして僕の絵に表現したくて、だから……。

「それで俺を、お前のモチーフ……モデルにしたい、と」

 僕のまわりくどくて下手な説明を最後まで、イヤな顔もせずに聞き終えた彼が、やわらかな微笑みを浮かべて言った。

「いいよ。ってか、ここンとこ俺の姿ばっかシャッター切ってる、とか……そんな目で見られて口説かれたらそりゃ、な」

 そんな目って、どんな目? ……あっ、ちょっとジロジロ見すぎだったかも? 慌てて顔ごと視線をそらすと、彼の伸びてきた両手が僕の顔を挟み込み、顔を元の位置に戻される。
 至近距離で見る彼の瞳もとてもキレイで、見惚れてしまって、触れてきた唇がやわらかくて……って、あれっ? どういうこと、いったいなに、が……?

11/1/2025, 7:54:15 AM