たま

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 好きです、付き合って下さい。

 緊張で震える心臓を必死に隠しながら気持ちを伝えた僕に高校卒業間近にやっと春が訪れた。ベタな告白だったけど、それが功を奏したのかもしれない。
可愛いと思う女の子の話題になった時にすぐ名前がでてくることはなかったけど、僕にとっては彼女がダントツで可愛いと思ってたし、みんなも口にしないだけで内心では彼女のことを狙っているのではないかと疑念していた。それくらい彼女に惚れていた。
 そんな彼女に二つ返事でいいよ、と言われた時の喜びは筆舌しがたいほどだった。告白が成功した後に何を発言したのか全く覚えていないけど、それくらいあの時の多幸感に包まれて頭が真っ白になる感覚は、今後の人生においてもそう何度も経験できないだろう。
 しかし、彼女と解散した後に冷静になって考えると、初めてできた恋人という関係性にどうすればいいのかさっぱり分からなかった。他の男と比べられて捨てられるのではないだろうか、知らぬ間に蛙化現場を引き起こしてフラれるのではないか。そういった類の恐れや不安と闘いながら彼女との関係を深めていった。会う度に彼女の知らない一面に出会えたし、会う度にその可愛さに度肝を抜かれた。普段は軽口を叩いたりツボが浅くてすぐ笑ったりするんだけど、たまにフッと見せるわがままで甘えてくるところや真剣に悩んでる様子は男心をぐっと捕まえられた。我ながら単純だと思うけど、彼女に触れる度にそんな思考は霧散していった。それでもよかった。もう制服は着れなくなるから、と制服デートを時間が許す限り行った。大学に入っても変わらず会えたらいいなと淡い希望を抱いて入学したけど、それぞれ別のコミュニティが出来ていくことで徐々に会う頻度はどうしても減っていった。だけど、いや、だからこそ会うことに希少性を感じたし、彼女もそう思って欲しいから彼女が欲しがっていたものをプレゼントしたりイメチェンしてみたりした。でも、何かと理由をつけて会えなかったり、LINEの返信速度が遅くなってきた。やっとデートできると思ったら早めに解散を強いられたりして、徐々に距離ができてきた。認めたくないけど、彼女にもう気持ちが無いように感じた。それでも彼女から別れを切りだされることは無くて、それが返って不気味だった。会う度に、返信がある度に喜びと共にやってくる虚しさ。それに耐えられるほど大人じゃない。好きだからこそずっと一緒にいたい。でも、このままだと気持ちだけが先行してきっと上手くいかない。だから今日、僕はこの言葉を伝えるつもりだ。

わかれよ

1/6/2024, 5:19:48 PM