いぐあな

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300字小説

遠き星の桜

 春のこの時期、私達の住むJAPAN‐AREAは桜の花に薄紅色に染まる。この花は私達のご先祖が地球にいた時代から、愛され親しまれてきた花らしい。もう純然たる『ソメイヨシノ』は博物館や植物園にしかないが、ご先祖達はその系統を受け継ぐ桜を、この星の環境に耐えうる品種に改良してまで、AREAの津々浦々に植えた。

 淡いエメラルドグリーンの空に映えていた桜並木の花がひらりひらりと散り始める。桜散る、幻想的な美しい光景のなかをゆっくりと歩いていると、散る花びらにあわせ、一人の乙女がくるくると舞っていた。
『こんなところまで連れてこられたけど、相変わらず愛でてくれて嬉しいわ』
 乙女はにこりと笑うと風の中に消えた。

お題「桜散る」

4/17/2024, 12:12:22 PM