悪役令嬢

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『月夜』

ふと彼を呼ぼうとしたけれどやめた
彼は満月が近くなると休みを入れる

テラスから夜空を見上げれば
大きな丸い月が浮かんでいた

ずっと見つめていたら
吸い込まれそうなほどに幻想的な月

私さえも狂おしい衝動に駆られるのだから
彼にとってはもっとずっと耐え難いものなのだろう

魔術師から発作を抑える薬を貰っていた
付け焼き刃かもしれないがないよりはマシだ

「月が綺麗ですわね」
とある三日月の晩に
そう呟いたら彼の顔は険しくなった

まるで彼にとって月は忌むべきもので
あるかの様なそんな表情だった

私には彼の痛みや苦しみはわからない
けれど彼が一人で抱え込む姿は見たくない

これ以上彼を苦しめないでと
私は月に祈りを捧げた

3/7/2024, 7:04:14 PM