箱庭メリィ

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「秋広」
「おー、保喜」

保喜(やすき)とは、俺の名前だ。
今日も学校、部活が終わった後は示し合わせたように共に帰路に就く。
クラスが同じの秋広とは、幼馴染で家の方向も同じの親友だ。

「なあ、お前今日も佐々木さんと話してたろ? 付き合ってるん?」
「付き合ってないよ。同好ってだけ」
「どうこう~?」

俺は今、恋愛相談を受けている。件の佐々木さんから。秋広のことが好きだと。

「同好ってなんだよ?クラブでも作んのか?」
「クラブまではいかないな。実は好きって人も中にはいるだろうけど」

でも俺は相談を受けていながら、彼女の期待に背いている。
俺も秋広のことが好きだからだ。

「ふ~ん。メンツ集めりゃいいじゃん」
「そんなに大っぴらに出来ない趣味なんだよ。ほっとけ」
「えー、なんだよ、それ!教えろよ」

「お前のことが好きなメンバーです」なんて、誰が言えるかよ。

俺は今日も秋広への「好き」を胸に秘めたまま、奴の隣を歩く。


/9/5『言い出せなかった「」』

9/4/2025, 1:58:34 PM