300字小説
今こそ憧れの時を
子供の頃、友達の家で見せて貰った、可愛いドールハウス。
色とりどりのお洋服に、小さな家具、夜は電灯を灯して光る窓。全てが欲しくてたまらなかったけど、当時の私には贅沢過ぎて、憧れて眺めるほかになかった。
あれから五十年以上が経ち、私はようやくドールハウスを手に入れた。綺麗なドレスも小さな家具も、老眼鏡越しに作り始め、飾れるようになるまでになった。
『お孫さんのプレゼントですか?』
ときにそう訊く人もいるけど。
「今日は何をしましょう」
色とりどりのお洋服を人形に着せ、小さなお庭の白いテーブルで可愛いアフタヌーンティーパーティを催す。
あの頃、憧れた楽しい時間。あの頃の私によく似た人形が満足気に微笑んだ。
お題「色とりどり」
1/8/2024, 11:52:47 AM