紺色

Open App

ある日、彼女と出会った。

僕より10歳上の彼女は当時16歳だった。

隣の家の庭に彼女はいた。

傷だらけの手で汗を拭いながら笑っている姿を思い出す。

彼女の手は白かったが、かたくもあった。

理由を尋ねると、彼女曰く「花を育てているから」だった。

確かに、彼女の家の庭には赤い花が咲き、抜こうとするとトゲが刺さった。

おかしなことに彼女はその花を美しいと褒め、愛おしそうに眺めていた。

そして、だいたい彼女は僕にこういった。

「好きな人にこの花をもらうんだ」

その時の僕には理解ができなかった。

何故わざわざ棘のある花を貰おうとするのか。

今になって分かったが、その花はきっと薔薇だったに違いない。

狂ったように咲き誇っていた花の匂いを今も僕は鮮明に思い出せる。

今どこにいるか分からない彼女の匂いも薔薇の匂いだったように思う。

ふと、どこからか薔薇の匂いがした気がした。


                             花の香りと共に

読んでくださりありがとうございました。

もうちょっと詳しく書こうと思ったんですけど、私、薔薇の匂いを嗅いだことがなくて。

どんな感じか分かりませんでした。

3/17/2025, 6:37:56 AM