紅子

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『キャンドル』


「ただいまより新郎新婦のお二人が、熱い愛の炎がともったトーチをもってキャンドルサービスに皆様のテーブルを回ります。」

結婚式の司会者の言葉で、会場が暗くなる。


友人である新婦の茜と新郎の大木先輩がスポットライトを浴びながらこちらへ歩いてくる。


茜と大木先輩とは高校で知り合った。


大木先輩はサッカー部のキャプテンで、私と茜はマネージャー。


茜とは同じクラスで、そもそもサッカー部のマネージャーを一緒にしようよ!と誘ってくれたのも茜だ。


私とは正反対の性格で明るくて活発で行動力もある茜。


『大木先輩が好き。』


彼女にそう教えてもらった時、私は「そーなんだ…応援してるね!」と言うのがやっとだった。


大木先輩に話しかける姿とか、

大木先輩を追う視線とか、

茜は恋する女の子だった。



それから茜は大木先輩に積極的にアプローチして、付き合う事になったのは私達が高2の秋。

そして今日6年の交際を実らせ、結婚式を迎えた。

「今日はありがと!」

私達高校サッカー部の仲良かったメンバーのテーブルのキャンドルに灯を点す二人。



あかりをゲストテーブルに灯していくキャンドルサービスは、「みなさまに幸福が訪れますように」と願いを込め、感謝の気持ちをゲストに伝える意味があるらしい。


「茜、キレイ…おめでとう。」


「遥、ありがとう!」


スポットライトの明かりに照らされてキラキラした茜の笑顔が眩しい。
 

茜と大木先輩は一礼して、次のテーブルへと背を向けて歩いていく。





…大好きだったよ、茜。


これからもずっと、幸せでいてね。


私はキャンドルの灯を見ながら、叶うことのない自分の恋とお別れをした。

11/20/2023, 6:34:36 AM