「僕と一緒に結婚してください!」
生涯一度や二度あるかないかのセリフに私は心が躍る
プロポーズしてくれた彼は、私が長年片思いをしている幼なじみだ。
いつもドジばっかりして危なっかしい子だと思っていた。
でも、写真だけはプロ並みに長けている。
彼が撮る写真はいつも空だけ。
私は彼が撮るフィルターを通した夕焼けの写真が好き
オレンジとピンクのコラボレーションが見事な風景に
カップルがハートを手で作っている黒いシルエットが
遠近法で重なって写っているその写真が圧巻だった。
条件が合えば誰にでも撮れそうなその写真が、
彼しかない魅力があると思った。
だけど、そのカップルの片割れは私ではない。
言い換えればそのカップルの片割れは
彼の本当のプロポーズの相手。
私にあのセリフを言ったのは、ただの練習だった。
じゃあ、ハートを作っているもう一人は?
と誰もが疑問に思うだろう。
それは彼が思いを寄せていた彼女の彼氏。
つまり、幼なじみは振られた。
わかっていながら彼女に振られた幼なじみは、
その彼氏に花を持たせた。
幼なじみの愛を断った女性と彼氏の二人の記念写真を
皮肉にも私はどんな写真よりも好きだ。
9/24/2025, 6:22:56 AM