ただ愛してほしかった、それだけだった。
 どんどん欲張りになって嫉妬して、でも妬むことはなかった。羨ましいとは思えなかったから。頭を撫でられ喜ぶ姿に馬鹿だなと思っていた。だって痛いことされてたくさん我慢したからそうしてもらえてる、少なくとも私の知っている世界ではそれが普通だから、毎日のほほんとしているのも全部我慢の上で成り立っていると信じて疑わなかった。
 でも違った、何もしなくても愛されてた。
 嘘つき、と思った。だったら私も嘘をつこう。そうすれば愛される、痛いのも我慢も嫌だからたくさん嘘をついてあげる。無意味なのは最初から気づいていたしもっと嫌われることも知っていた。それでも許される人たちをみて私もそうなれるはずだと信じて疑わなかった。
「素直だね」
 その言葉が気持ち悪いのに嬉しい。嘘ばかりの私をみて褒められるのは苦しいけど救いだった。だって本来の私だったら絶対にもらえない言葉だから。大切に大切にゴミ箱に捨てる。
 今?今ね。今は何してるんだろうね。
 疲れちゃったから、休もうかなって思ってるの。
 そうなの、だからまた今度誘ってね。
 また今度が、あったらね
 あ、間違えちゃった。
 また今度会おうね、だよ。
 そうだよ私が病むわけないじゃん。
 そうでしょ、ね?
 
              【題:今を生きる】
7/20/2025, 9:53:59 PM