初心者太郎

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—初キス—

家族でドラマや映画を見ている時、キスシーンが出てくると、少し恥ずかしい気持ちになった。
たとえそれが感動するシーンであったとしても、なんとなく目を逸らしてしまっていた。


「今日はいっぱいおいしいもの食べたね」

夕焼けの砂浜。隣で彼女が言う。
今日はデートにきていた。
彼女と付き合ってから、二回目のデート。

「そうだね。特にあの店のソフトクリーム、おいしかったなぁ」

波の音が聞こえてくる。
ひいてはおしてを繰り返し、ザザァと気持ちの良い音を奏でている。

「夕日、きれいだね……」
「うん……」

二人で腰を下ろし、手を繋いで見ていた。

そのはずなのに、気づけば自然とお互いに顔を見合わせていた。
彼女が微笑む。
僕の心臓は、波の音が聞こえなくなるくらいに、激しく音を立てていた。

瞼を閉じ、ゆっくりと顔を近づける。
彼女の甘い香りを、すぐそばで感じた。

僅かな沈黙の後、僕らは唇を離した。

「暑くなっちゃった」と彼女は言った。手をうちわ代わりにパタパタとあおいでいる。

「僕も」

まだ、心臓の音が鳴り止まない。

あんなに目を逸らしていた自分が、今はこの時間を、ずっと覚えていたいと思っている。
それが『恋』なのだと思った。

お題:Kiss

2/5/2026, 12:37:51 AM