昔、娘がまだ2歳か3歳のとき。
どこに出掛けたのか、もう覚えてはいないけれど、娘と二人で家に帰る電車の中。
車窓から空を見上げると、今にも雨粒が落ちてきそうな低い雲。
しまった。傘を持っていない。
洗濯物も干しっぱなしだ。
家に着くまでに降ったら嫌だなぁ。
急いた気持ちをごまかすように、膝の上の娘に話しかけた。
「○○ちゃん、おうちに着くまで雨が降らないように、○○ちゃんからもお空にお願いしてー。」
軽い気持ちだった。
すると娘が突然、空に向かって叫んだ。
「お空さーん!」
あ、これはまずい。
予想外のボリューム。
アワアワする私をよそに、娘は続ける。
「泣かないでねー!○○ちゃんがいるから大丈夫だよー!」
静まり返った電車の中、慌ててももう後の祭り。
私のお願いを聞いてくれただけの娘。
叱れるはずもない。悪いのは私。
周りの人が微笑ましい顔をしてくれたのがせめてもの救いだった。
それにしても、空の心配をした娘に比べ、私はなんて…、なんて自分勝手だったんだ。
自分を恥じた、今となっては良い思い出。
4/2/2025, 12:28:55 PM