日が昇る。
暗い町に光が広がり、高層ビルがシルエットとなって浮かび上がる。
窓越しにそんな景色を見つめていると、肩口に何かが寄りかかる気配がした。
「おはよう·····」
「おはよう」
同居人はまだ覚醒しきっていないらしい。
長い睫毛に縁取られた瞳は、閉じようとするまぶたに必死で抗っているようだった。
「コーヒー、私の分もある?」
「ああ」
「ありがと」
どこか間延びした声でそう言って、同居人はゆっくり身を離す。ふらふらとした足取りでキッチンに向かう姿を見送って、また窓辺へと視軸を移すと、金色に輝く太陽がビルの谷間から顔を出すところだった。
輪郭のはっきりしない太陽は、放射状に広がる金色でたしかにそこにあると実感させる。
触れることの出来ない、だがそれでもそこにある存在感は見つめる者の胸に不思議な感慨を呼び起こした。
「·····」
愛、とか。
形の無いものが心の中に満ちていく感覚は、もしかしたらこういうものなのかもしれない。
少しぬるくなったコーヒーを飲みながら、男はそんな事を思った。
END
「sunrise」
5/21/2025, 3:02:38 PM