『サヨナラの日』
あの日 東京駅の
新幹線の改札前で 別れた
彼女は 二年半分の荷物を
キャリーバッグに入れて
僕の部屋から出ていく事を決めた
「じゃあね」
「……じゃあね」
君は 改札を抜けて
ホームに向かって歩いていった
振り向くかなと
ずっと後ろ姿を目で追っていたけど
そのまま 人の波の中に
消えていった
あぁ
こんなもんかな
こんなもんだろうな
理由なんて ありすぎてさ
どれが原因かなんてわからないよ
でも 僕がバカだったって わかってる
いつも 夢物語ばかり言っててさ
叶わない夢ばかり 追いかけてさ
本当に申し訳ない
いつも 彼女には
辛くて さみしい思いばかりさせた
ずっと ずっと
そばにいるのが当たり前だと思ってて
居なくなるなんて
これっぽっちも疑わなかったよ
なにやってんだよ自分
ホントにさ
でも……
これで 良かったんだよ
これで……
僕は ようやく 新幹線の改札から離れた
* * * * * *
「じゃあね」
「……じゃあね」
彼に背を向けて歩き出す
私は 出来るだけ普通の顔を作っていた
改札に切符を通す
スーツケースを引っ張りながら
改札を抜けて 新幹線のホームを目指す
『……絶対に……振り向かない』
心に決めていた
一歩 一歩 歩く度に
鼻の奥が熱くなってくる
……あぁ 私はね
ずっと あなたが好きだったの
一緒に住んでた二年半
あなたの夢が叶うように
ずっとずっと 一番の理解者で
味方で居たいって思ってた
でも
私が居たら ダメなの
甘えちゃうのよ
そしてあなたは夢を諦めちゃうのよ……
エスカレーターに乗り
ホームに着くと
私の涙はもう 止められなかった
ごめんね
なにもしてあげられなくて
役立たずで ごめんね
だから……
これで良かったんだよ
これで……
* * ** **
これで 自由だよ
もう 自由だよ
あなたも頑張ってね
君も幸せになりなよ
さよなら
サヨナラ
ありがとう
アリガトウ
バイバイ
6/26/2022, 5:38:54 PM