色野おと

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取り留めはあったほうが良いのだけれども、ときとして、敢えて取り留めのないほうが重くならなくて話し易い場合もある。これはそんな実際の話……



私は既に五十代後半……あと三年も経てば還暦を迎えることになる。いや、そんなこと言える今年もあと2週間を切ったのだね。いやいや、そんな話ではない。

私は受け持っていた仕事のせいで、父の亡くなる際も、母の亡くなる際もそばに居てあげることが出来なかった親不孝者だ。人としてどうなのか?と自問したりもしたのだけれども、時期的に私の一人娘が大学生になったばかりでいろいろと費用が嵩むこともあって、その養育のために仕事に専念せざるを得なかった。

人の子としては残念なことをしたけれど、人の親としては真っ当なことをしたと思っているので、人としては五分五分ってところじゃないかしら?



で、私の人生ってなにやら運命のめぐり合わせが悪いと云うかなんと云うか、安易に言ってしまえば数奇な人生なのやもしれない。初婚の相手は超絶わがままな都会っ子のマザコン娘で、自分のわがままのためにまだ小学生だった娘を置いて一人で東京の実家に逃げていってしまった。まあそこまではよくあることではあると思う。

実は、その初婚となった相手と結婚することになる前に、本当は長年付き合っていた6歳年下の女性がいて、正式な結納はしてなかったものの両家の親同士からも結婚を許されていた。実際、結婚するのもカウントダウンが始まってもおかしくなかった。そんな頃に、誰も理由が分からないまま彼女は私の前から姿を消した。あとで知ったことなのだけれども、その失踪の裏で初婚の相手の母親が糸を引いていたという事実があった。そこにはいわゆる自分の娘を嫁がせる策略があった。私の父方の祖父は広い土地を持っていて、先祖代々続く地主だったし、私と結婚しておけばそれなりにメリットはあった。そういう財産を狙っての夜叉のような醜悪さ浅ましさがあった。

そんなことも知らぬ間に一人娘も生まれて、その愛娘が小学6年生の頃に妻は自分勝手丸出しで逃げて別居、そして離婚。娘も大学生になり東京で一人暮らしを始めるまでに成長した頃、私の職場に実に二十年振りに6歳年下の元彼女が現れて再会を果たした。……のもつかの間、その彼女はその再会した日に交通事故で亡くなった。

責任の重い仕事からのストレスに加えて、彼女の死の痛手・心痛もあって、遺伝性のある心臓疾患で職場で倒れた。精密検査の結果、ブルガダ症候群と判明。原因不明の心室細動によって心臓が突然止まってしまう病気のことだ。



その職場には、私がシングル・ファーザーとして生活と仕事を切り盛りしていることを陰から応援してくれて、何かとサポートしてくれていた16歳年下の女性がいた。あまりにも優しくしてくれるので、一度二度、デートっぽいことをしたこともあったのだけれど、自分の心臓障害のこともあって私から遠ざかってしまった。最後は喧嘩っぽくなってそのまま私は病気を理由に退職し、二度と会わなくなってしまった。

その五年後の2018年。その優しかった元職場の女性から突然「直接会って話したい。私の家まで来て欲しい」という連絡があった。彼女の実家へ向かい五年ぶりに会った彼女はベッドでの生活を送っていた。とても痩せていたし、長かった自慢の綺麗な髪もバッサリ……という激変した容姿だった。女性特有の子宮頸がんで末期(ステージⅣ-B期)に入っていて、長く持ってもあと四ヶ月とのことだった。私が一番辛かったときに優しく支えてくれた人がどうしてそんなことになるの? 神様なんて理不尽すぎると、本気で天に怒りをぶつけた。

彼女には最期まで私の知っている心の可愛い女性のままでいて欲しいと願った。そんな女性なんだということ、愛されるべき女性なんだということをちゃんと分かっていて欲しくて……「俺と一緒になろう。結婚しようよ。できる限りの思い出を残そうね」


……ダメだ。当時のこと思い出したら悲しくて寂しくて、もうこれ以上書けない。中途半端ですみません。



テーマ/とりとめもない話

12/18/2023, 4:02:29 AM