2牡蠣

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些細なことでも



「些細な事でもいい、だから何でも言ってくれ」
 ソファに座って楽しく映画を見終えた後、彼が真剣な眼差しをアタシに向けて来た。
 普段はエッチしたい時以外では見せた事が無い。明日は槍でも降ってくるんじゃないだろうか。
「えっ、この後ヤルんじゃないの?」
「ヤリたい。でも、気になるんだ」


「部屋取ってからずっとキョロキョロしてるよな、この部屋何かあるのか?」


 ラブホが初めてだったからキョロキョロしちゃった♡ とは言い訳としては良いんじゃないかなと思ったけど、映画中もたまにどこか見てたよな、と先手を打たれてしまった。




 そんなわけで視えたモノを洗い浚い話したわけだけど、肝っ玉の小っさい男だったらしく話を聞いたら逃げられた。
 置いてくんじゃねーよ!!!! 料金アタシが払うのか!!!?




 その後は当然だけど別れた。アイツが浮気してるのも分かってたからね。


 アイツの首に、綺麗なつけ爪を施した細い指が幾重にも締め付けるように絡み付いてたし、たまにこっち睨んで来てたから本命はアタシじゃなかったのかもだけど。

9/3/2024, 3:09:52 PM