シロツメ ナナシ

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『真昼の夢』


―――ほんの数瞬の出来事

気がついた時には
とにかく走って逃げていた

建物の中
長い長い殺風景な
コンクリートの廊下を走る

角を曲がって階段が
上に上に逃げていく

木造じゃないのに火の出が迫り
汗もだくだくでとにかく逃げる

登りきったその場所は
遠くの景色がよく見える

自分の身近な所は
全てが怪しげな森だった
見るからに見たことない色をしていた
だけど火の手がそこまで
真下の湖に一か八か飛び込んだ


―――どうやら無事だった

すぐさま立ち上がるが
そこはやはり怪しい森
植物が立ち、襲いかかってくる
逃げてみるが直ぐに植物のツルにつかまり
巨大すぎるほどのウツボカズラ
それに私はあっさりと
飲み込まれてしまった…―――

その先は胃袋ではなく
奈落の穴のようだった

落ちていく…
ただ落ちていく………


ふわっとなにかに掴まれた
出口の無い奈落の目の前には
とても鈍く弱い光が…

それに私は
ゆっくり包まれていくと……


足が地に着いた

目の前にはまるで
ゲーム世界の家のような扉
ガチャ
っとどこかで聞いた音とともに開くと
そこには…


私の大切な人たちが
私の恐れていた姿で
とにかく…あらゆる考えたくない形で
その場にボロ雑巾のように転がっていた

私は―――声を上げれなかった―――

私の中のあらゆる感情が交錯し
何から、どの感情から
出せばいいのか分からなかった……

そんな混濁した思考のまま
そこに1人だけぽつんとたっていた
その人は まるで
私を待っていたかのように
こちらに振り返る

―――『私』だった
それも、とても……笑顔だった

『私』は、私と目が合うと
鈍い光の その先に歩き出し
消えていってしまった―――

ぁ………

📱.・*’’*・.♬.・*’’*・.♬


ビクッ!!!!



スマホのアラーム―――


……私は10分のタイマーをかけていた

ゆっくりスマホに手を伸ばし、止めた


………はぁ〜〜〜…

なにかものすごく
とにかく辛くて怖い夢を見ていた

……はずなのに、
ほとんど覚えてない…

一部覚えてるのは…
私は『私』の笑顔を見た事―――


私の中のなにかが
向き合いたくないものたちが
浮き彫りになったような…
はたまた
私の中からなにかを、持って行ったような
そんな感覚がする

そんな、たった…10分…
いや、それにも満たない時間で
『私』は 私に
なにかを伝えたかったのだろうか

そんな真夏の 真昼の夢


〜シロツメ ナナシ〜

7/17/2025, 6:27:53 AM