蓼 つづみ

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喜:笑いが誰かに伝播し場がぱっと明るく満ちるとき。
怒:小さな喧嘩で、心の縁が薄く欠けてしまうとき。
哀:独りの帰り道、沈む光を追うように空を仰ぐとき。
楽:散歩道の曲線にふいに足どりが軽くなるとき。

心は満ちては欠け、欠けては満ち、
ゆっくりと色を変えながら揺れ続ける。
ひとの心は果てのないグラデーションだ。

たとえ自分を
世界の片隅にぽつりと落ちた影のように感じていても
それは “自分の位置から見える景色” にすぎない。

知らぬまま誰かの暗がりに灯り、
名も知らぬ誰かの孤独をあたため、
気づかぬまま誰かの道をそっと照らしている。

昼の月は埋もれているのではなく、
青の粒子に紛れながらも、静かに、確かに、
白い輪郭をたたえたまま空に在り続ける。

君を照らす月もまた知らぬままに。

題 君を照らす月

11/17/2025, 5:55:00 AM